4月23日は「サン・ジョルディの日」です。日本ではあまり知られていませんが、スペイン生まれのイベントでバラの花と本を贈る日とされています。このサン・ジョルディの日とはスペイン・カタルーニャ地方のサン・ジョルディ伝説を元にした伝統的な祝祭日です。4月23日はサン・ジョルディが殉教した日で、いつしかこの日に花と本を贈りあって、愛を伝え合う日になりました。
サン・ジョルディの伝説とバラ
昔、カタルーニャと呼ばれる国がありました。その国には、恐ろしいドラゴンがいて、そのドラゴンの怒りを鎮めるために住民たちは毎日1人ずつ生け贄を捧げていました。ある日、王様の娘が生け贄になる順番が回ってきました。大勢の人が王様の娘の身代わりになることを申し出ましたが、王様はその申し出を受け入れず可愛い娘を生け贄に差し出しました。
お姫様が生け贄になるちょうどその時、白馬に乗った若い騎士が現れ、驚く娘に「あなたを救いに来ました。ドラゴンを退治して平和を取り戻すために」と言い、彼はドラゴンを一突きで仕留め、見事お姫様を救い出しました。その騎士こそが、サン・ジョルディだったのです。
彼が槍で突き刺したドラゴンの心臓からは血が溢れ出し、そこには見たこともないほど美しいバラが咲き乱れたと言います。その中で最も美しいバラを永遠の愛のシンボルとしてサン・ジョルディはお姫様に贈りました。
それ以来カタルーニャの人々は、毎年4月23日をサン・ジョルディの日とし、愛する人にバラの花を贈って祝うようになったのです。サン・ジョルディはサン・ジョルジュやセント・ジョージなどと各国によって発音を変え、ヨーロッパ各地で守護聖人となっています。
本の日
では本を贈るのはなぜでしょうか。この日は小説『ドン・キホーテ』の著者であるスペインの文豪ミゲル・セルバンテスの命日(1616年)でもあります。さらには『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』で有名なウィリアム・シェークスピアの誕生日(1564年)であり命日(1616年)でもあるため、文学に非常に縁の深い日であることから本を贈るという風習が広まりました。(当時シェークスピアのいたイギリスではユリウス暦を、またセルバンテスのいたスペインではグレゴリオ暦を採用していたため、厳密には両者の誕生日や命日は同日ではありません。)
ユネスコでは1996年からこの日を「世界本の日」とし、国連の国際デーのひとつになっています。本の良さを再認識し、親近感を育むことを目的としており、日本でも2001年12月に公布された「子どもの読書活動の推進に関する法律」の第10条において、この日は子ども読書の日にも定められています。
スペインの都市では、あちこちで親子や友達、会社の上司と部下などの間で日頃の労をねぎらったり、友情を深めたりするなど、相手を思いやるイベントとなっています。
日本におけるサン・ジョルディの日
日本では日本書店組合連合会と日本カタルーニャ
友好親善協会等が、花と本をプレゼントする欧米の
習慣を日本にも定着させようと、1986年に
4月23日を本とバラを贈るサン・ジョルディ
の日とし、プロモーションを始めました。
毎年、東京や横浜、名古屋、北海道、
山形など各地でイベントが行われて
います。とりわけ名古屋のサン・ジョルディフェスティバルでは街の路上に花や本の市ができて、盛大にイベントを行うようです。
サン・ジョルディの贈り物
この日、男性からは女性には聖人の象徴である赤いバラに、繁栄を意味するムギの穂を添えて贈るのが一般的のようです。女性からは男性には相手の好みそうな本や話題の本、写真集や画集などを贈ります。
4月23日には好きな人にだけでなく、日頃お世話になっている先輩や友人にもお礼の意味でちょっとした花束や本を贈って、知的でロマンチックな習慣を広めてみてはいかがでしょうか。